1、以前は、相続人がいる事案で、相続人以外は特別な貢献をしても、権利主張をできる制度はありませんでした。
典型的な例としては、相続人である長男が亡くなって、その後も長男の妻が長年義父や義母と同居をして義父母の在宅介護等をしていても、長男の妻は義父母の相続人ではないので、他に次男などの相続人がいれば、長男の妻は義父母の相続について何の権利も主張できませんでした。
2、相続人が、被相続人の療養看護等に努めるなどの特別な貢献をした場合には、寄与分(民法904条の2)が認められれば、寄与分により、法定相続分より多めに相続財産をもらうことが認められていましたが、この寄与分の主張は、相続人しか認められていませんでした。
3、また、相続人が誰もいない相続人不在の事案(被相続人が独身で妻子がなく、兄弟姉妹がおらず、両親等も死亡しているような事案)では、相続人以外が被相続人に療養看護など特別な貢献をした場合には、特別縁故者として、相続財産から分与が認められた財産をもらうことができましたが(民法958条の3)、相続人が1人でもいれば特別縁故者の申し立てをすることができません(なお、特別縁故者の場合は、親族でなくても、隣人等の他人でも特別の貢献をした場合は特別縁故者の申し立てをすることは可能です)。
4、よって、以前は、相続人が1人でもいる事案においては、相続人以外が被相続人に対して療養看護等をするなどして特別な貢献をした場合も、権利の主張を認められる制度がありませんでした。
5、しかし、今回の平成30年の相続法の改正により、特別寄与料という新しい制度が認められました(民法1050条)。特別の寄与分の制度の施行日は、令和元年7月1日施行ですので、令和元年7月1日以降に発生した相続(死亡日が令和元年7月1日以降)の事案から特別の寄与分の制度が適用できることとなります。
特別寄与分の請求ができるのは、被相続人の親族(6親等内の血族、三親等内の姻族、配偶者)であるが相続人でない人になります。
よって、親族でない他人は療養看護等をしても特別寄与分の主張はできません。
特別寄与が認められるためには、療養看護等で被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与が認められた場合になります。
特別寄与者は、相続人に対して、特別寄与の請求をすることとなります。特別寄与者は、相続人が複数いるときは、各相続人に対して、法定相続分に応じて特別寄与の金額を請求することとなります。特別寄与分の額はまず当事者間の協議により決定します。
当事者間で特別寄与の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に特別寄与の調停・審判の申し立てをする必要があります。家庭裁判所への特別寄与の申し立ては、相続の開始等を知ったときから6ヶ月以内又は相続開始時から1年以内に手続きをする必要があります。
家庭裁判所は寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与の有無及び額を定めることとなります。
家庭裁判所は、療養看護の場合、被相続人が要介護2以上の状態にあることを1つの目安としています。
そして、特別寄与の制度における療養看護の事案においては、職業介護人の7割程度の費用を目安に判断される場合が平均的な目安とされています。
6、このように、今回の法改正で、相続人でなくとも、親族であれば、被相続人に対して療養看護など特別の貢献をしている場合は、特別の寄与分の請求ができることとなりました。
7、これによって、被相続人に特別な貢献をした場合については、次の3つの制度で対応できることとなりました。
① 相続人が特別な寄与をした場合は寄与分(民法904条の2)により救済
② 相続人は存在するが、自らは相続人でない親族は今回の法改正で認められた「特別の寄与分」(民法1050条)という制度で救済
③相続人が存在しない場合で、被相続人に対して特別な貢献をした場合は「特別縁故者による相続財産の分与」(民法958条の3)で救済を図れることとなりました。
8、ただし、特別の寄与の制度が認められても、相続人でない親族のみが請求権者であり、しかも療養看護など特別な貢献をしたと認めた場合のみ特別寄与が認められるにすぎないので、相続人以外に自分の財産を渡したいときは、生前に被相続人の方で、死因贈与契約書を作成するか、遺贈の遺言を作成することなども検討する必要があると考えます。
相続レポート
REPORT
相続法改正:特別の寄与分の制度
2022.07.20
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