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相続税の延納制度の概要と注意点

2025.01.20

はじめに

相続税は、相続開始日から10か月以内に申告と納税を行います。

納税は現金で一括納付が原則となりますが、相続財産の多くが不動産であったり現預金が少ない場合に一括納付が難しいケースもあります。

そのような場合に相続税の延納制度の検討をしてみてはいかがでしょうか。

ただし、利用するためにはいくつかの条件を満たす必要があり、手続き不備やスケジュールの見通しの甘さからトラブルになることもあります。本記事では、延納制度の概要と実務上の注意点について解説します。

 

延納期間と利子税

相続財産の内容によりけりですが、例えば相続財産に占める不動産等の割合が75%以上の場合はその不動産等に関わる延納税額については最高20年の延納期間が認められています。

また、延納制度を利用する際は利子税を毎年納める必要があります。

利子税に適用される%は別途計算が必要となりますが、上記の例と同じように相続財産に占める不動産等の割合が75%以上の場合はその部分の利子税についてはR7年度においては「0.6%」となっています。

詳しくは国税庁のHPに記載しております。

https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/enno-butsuno/pdf/3001tebiki01.pdf

 

延納制度の利用条件

①相続税額が10万円以上であること

②金銭で納付することが困難な金額の範囲内であること

③「延納申請書」及び「担保提供関係書類」を納期限までに提出すること

④延納税額に相当する担保を提供すること

 

担保の提供

延納制度を適用する場合には延納税額に見合う担保の提供が必要となってきます。担保提供時の要件は下記のとおりです。

・担保として提供できる財産の種類であること(有価証券、不動産など)

・担保として不適格な事由がないこと(担保の設定がないもの、共有不動産で他の共有者の許可が得られない場合など)

・必要担保額を充足していること(担保見積額は土地の場合は時価の8割以内の額など)

 

延納することができる金額

①納付すべき相続税額
②現金納付可能額※
①-②=延納することができる金額

※現金納付可能額=③-④-⑤

③納期限において有する現預金、換金可能な財産相当する金額
④申請者及び生計を一にする配偶者その他の親族の3か月文の生活費
⑤申請者の事業の継続のために当面(1か月分)必要な運転資金(経費等)の額

 

実務上の注意点

・建物を担保に提供している場合は、延納期間中は火災保険に加入しなければならない

・遺留分を請求される際は、遺留分侵害額請求による金額を確定させておく必要がある

・共有不動産を担保に提供する場合は他の共有者の許可を事前に得ておく必要がある

 

おわりに

相続税の延納制度を利用するために、申請期間内の手続きや担保の提供といった様々な条件をクリアする必要があります。また、延納中に利子税が発生し、最終的な納付額が増加する点にも注意が必要です。

延納制度を利用される場合はこれらを考慮した上で、余裕を持って計画的に進める必要がありますので事前に専門家に相談されることをおすすめいたします。

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筆者紹介

税理士法人 アーリークロス 副代表 相続・承継支援部長
小山 寛史

学歴 関西大学卒業 西南学院大学大学院卒業

国内最大手税理士法人にて資産税、事業承継案件を経験した後、国内中堅税理士法人にて資産税、事業承継、法人顧問など幅広く業務を経験。 税金面のアドバイスはもちろんのこと、クライアントの「想い」に寄り添った提案を心がけている。 特に不動産オーナーの相続対策については、「評価額圧縮」「遺産分割対策」「納税資金対策」「生前贈与対策」の4つの柱を軸に円満な相続ができるよう偏りのない総合的なアドバイスを行っている。 不動産オーナー向けのセミナーも多数開催。

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